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ひだまりスケッチ。


ヒロと沙英。短め。

+ + + + + + + + + +
ぼすん、というくぐもった音が隣の部屋から聞こえてきた。普通の人なら何事かと駆けつけるのかもしれないが、ヒロにとってはその音は慣れたもので、むしろ喜ぶべき音である。
「終わったのかな」
笑みを浮かべながら、小さな声で、隣の部屋に住む小説家兼クラスメイトのことを思った。彼女が締め切りに追われてまともに睡眠をとらないのは既に当たり前のようになっていて、それにひと段落つくとベッドに飛び込むのも日常茶飯事。さっきの音は、恐らくその音なのだろう。


ヒロはあらかじめ作っておいたサンドイッチを持って、隣の部屋へと向かう。合鍵を使って静かにドアを開けると、少し散らかった部屋の様子が目に入った。
お邪魔します、と吐息と同じくらいの大きさで呟いて、そっと足音を立てないように中に入る。案の定、ベッドにうつぶせて掛け布団もかけず、静かに寝息を立てている沙英の姿がそこにあった。
「もう、また眼鏡かけっぱなしで」
サンドイッチをテーブルの上に置いてから、優しく、静かに、彼女の顔から眼鏡を外す。眼鏡をかけていない沙英の姿を独り占めできるのはきっと私だけだろうな、と思うと、少し誇らしかった。
ベッドの脇に眼鏡を置いて、沙英の顔に掛かっている髪の毛をそっと払うように撫でた。全く起きる気配はなく、それだけで彼女がどれほど疲れているのかがよくわかった。
無理しないでね、とそっと呟く。沙英の仕事が、無理をしないと出来ないものだとわかっているからこそ、今しか言える機会は無かった。
しかし、彼女の無理を支えるのが自分の役目だともヒロは思っている。好きだからこそ沙英がどれだけ追い詰められてもこの仕事を辞めようとしないように、ヒロも、好きだからこそ彼女を支えたかったし、それを辛いとは思わない。
「おつかれさま」
そっと、沙英の頬に唇を寄せた。うん、とくすぐったそうに身をよじる沙英がかわいかった。


沙英が起きたときのために、ちょっと豪華な夕食を作っておこう。「おつかれさま」の置手紙をサンドイッチの横に添えて、ヒロは静かに部屋を後にした。
柔らかな午後の昼下がりの日差しの中、スーパーまでの足取りは軽かった。

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