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ひだまりスケッチ。


沙英とヒロとクラスメイト。将来のこと。
眠い目擦りながら書くもんじゃない。

+ + + + + + + + + +

高校二年生も後半になると、進路について考える機会も増えてくる。
教室で何気なくしている世間話の中にも、時折そんな雰囲気の会話が挟み込まれるようになり、そろそろ真剣に「将来」というモノを考え始める頃で。
その日の昼休みも、ふとしたことからそのような会話になっていた。
「やっぱり美大進むの?」
「うーん……どうしようかなーって」
クラスメイトのそんな言葉を、沙英は近くの自分の席に腰掛けながら、人事ではないなぁなんて思いながら聞いている。
このところ、そういうことをよく考えるようになった。本業はもちろん作家なのだから、しかるべき進路を選んだほうがいいに決まっている。しかし、やまぶき高校の美術科というところに入って、美術のあれこれを学び、それに興味を持ってしまったのも事実で。
どっちつかずっていうのは良くないよね、ゆのにも言われたし……と頭のどこかで考えながら、どこそこの美大は良いらしい、でもレベルが高くて云々、という会話をぼんやりと眺める。
皆やっぱり、色々考えてるんだ。
それは当たり前のことなのだが、それがどうにも焦りに近い感情を呼び起こすので、こういう話題は得意ではない。巻き込まれないように、沙英はわざとらしく鞄からペットボトルのお茶を取り出し、一口飲んだ。


「何の話してるの?」
そんな沙英の後ろから、ピンク色の髪の毛が視界に入ってきた。顔を上げて、その声と髪の毛の主を見る。
「進路の話」
ふう、とため息をつくような沙英に、ヒロは苦笑を返した。沙英が将来のことで悩んでいるのは知っているヒロだから、今は触れられたくないのだろうな、というのがよくわかって、それ以上は追求しない。
クラスメイトたちはヒロの姿を確認すると、話題をいったん切り上げてヒロが入るだけのスペースを空けた。会話に加わろうよ、という誘いだろう。
「ヒロもやっぱり美大希望?」
一人がそう尋ねると、ヒロはそうね、とあごに手を当てて考える素振りを見せた。そんなヒロを、沙英は横目で見つめる。そういえば、ヒロのそういう話を聞いたことってあんまり無かったな、と思い出す。
「私は、まだあんまり考えてないかな。もちろん美術関係の学校に進みたいって思ってるところもあるけど、料理とかデザインとか、やりたいこと色々あるし」
「ふーん、なんだかヒロらしい」
クラスメイトの言葉に、ヒロはそうかしらと笑う。


そうか、卒業したら、同じ進路に進むとは限らないんだ。ヒロとも離れ離れになるのかな……。
一方で沙英は、関係ありそうで無さそうな、そんなことを考える。頭の中でヒロのいない生活を思い浮かべて、一人ナーバスな気分になりかけていた。
だから、クラスメイトの一人が、妙に含みを持たせたようなニヤニヤとした笑顔でヒロと沙英を見ていることに、沙英は気付かない。
「でもさー」
そのクラスメイトが、ニヤニヤ顔を崩さずにヒロに話しかけた。ヒロは首をかしげ、沙英は相変わらず想像の世界に旅立っている。
「ヒロは専業主婦って手もありだと思うんだよねー、良いお嫁さんになりそうだし」
お嫁さん、という言葉に反応して、沙英がようやく現実に戻ってきた。
「な、何言ってんの! そんなの相手がいないと無理じゃん!」
「おや? なんで沙英がそんなにムキになるのかな? ヒロの話だよ?」
「だ、だから……ヒロにそんな相手いないし!」
ニヤニヤはいつのまにか、その場にいるクラスメイトほぼ全員に感染し、そんな視線に晒された沙英の顔は赤い。ヒロも困ったような笑顔を浮かべながら、やはり心なしか顔が赤い。
「相手かー、相手ねー……小説家のお嫁さんとか素敵だよねー」
「ぶっ!」
落ち着こうとペットボトルに口をつけていた沙英は、その一言に思わずむせこんだ。
「あー、いいよねー。締め切りに追われる旦那に、珈琲を淹れてあげたり夜食作ってあげたり」
「あれあれ? そういう二人既にいなかったっけ?」
「さあ、いたような気がするけど誰と誰だったっけ?」
意地の悪い笑顔を浮かべながら、クラスメイトたちは好き勝手に話を広げていく。沙英はどうするべきかと思いながら、しかし言葉が出てこずに、真っ赤な顔で「あんたらは……」と呟くことしか出来ない。
「それで、どうなのさ、ヒロの意見としては」
そんな沙英の様子をいつもの如くかわいいなぁと見つめていたヒロは、唐突に話を振られて少し戸惑った。いや、もともとはヒロの話なのだから、いつか会話を振られることは当然なのだが。
「そう、ね……そういうのもアリかもしれないわね」
仄かに頬を染めてそう呟いたヒロに、クラスメイトたちは「おおー」とか「キャー」とか好き勝手な反応を示す。
「ちょ、ヒロまで……」
逆に沙英は、米神を押さえながらヒロに視線を向ける。
「沙英はイヤ? 私は……沙英がよければ、ホントにそれもいいかなって思ってるんだけど」
「い、イヤなわけないじゃん! その……私も、ヒロがこれからも側にいてくれるなら、うれしいし」
「ホント? 良かった」
そして、ヒロはふわりと笑った。
沙英はそれに、さっきまでとは違った体温の上昇を感じて、しかしぎこちない笑顔をヒロに向けた。


「あー、からかったつもりなのになんかマジ惚気みたいになっちゃったよこの人たち」
「というか、今のプロポーズっぽいよね」
「いいんじゃない? 二人が幸せなら」
「まあ沙英男前だし」
「あーあ、私も良い人見つかんないかなー」
理解あるクラスメイトたちは思い思いの感想を二人に向けつつ、一様にため息を吐いた。
そんな彼女らに、沙英は相変わらず赤い顔で反論にならない反論の言葉を返し、ヒロはそれを見ながら笑う。


果たしてこのときの会話が将来実現したのかどうか、それはまた別のお話。

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