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ひだまりスケッチ。


沙英とヒロ。「密着・~」と繋がってるような。
タイトル通りのバカップル。

+ + + + + + + + + +

かちこちと時計の秒針が音を立てている。それはとても小さな音で、しかし部屋の中はとても静かで、部屋の壁に反響する。
しかし、ソファに座る沙英の耳にその音は入らない。聞こえてくるのは、自分の鼓動と、そしてヒロの鼓動と吐息。
腕の中のヒロの表情は、その体を後ろから抱きしめている沙英には見えない。伝わってくるのは温かさと、柔らかさと。ふわふわの髪の毛が頬を撫でる、くすぐったいような感触。
それが否応無く沙英の心拍数を上げていく。そして送り出された沸騰しそうなほど温まった血液は、自分の意思とは関係なく、主に顔に集まって、その温度と赤みが上昇していく。
「ヒロ……もういい?」
「だーめ」
砂糖菓子のような甘い声で、ヒロは答える。その表情は穏やかで、でも沙英と同じように、ほんのりと紅潮していた。
ヒロはそっと、さらに沙英によりかかってみる。それを受け止めるように、沙英はヒロの前に回している腕に少し力を入れた。砂糖菓子のように甘い柔らかさをより感じる。
その腕に、ヒロはそっと手を添えた。その感触がなんだか生々しくて、沙英はこの状況をより一層実感する。
クッションが欲しい、と沙英は思った。どくんと高鳴った胸の音が、ヒロに伝わってしまいそうで。でもこの体全体で感じる温もりとか柔らかさとか……つまりヒロは、こうしてぴったりとくっついているから感じられるわけで。
贅沢なジレンマだと、沙英は苦笑した。
「? どうかした?」
沙英の苦笑を感じ取ったのか、ヒロが振り向く。なんでもないよ、と沙英は赤い顔を隠すように顔を逸らした。
その反応が不満なのか、ヒロは少し膨れるような表情を見せた。
「迷惑だと思ってる?」
「思ってないって。でも、なんで?」
その問いは、この状況全体に対する問いであって、ヒロの質問への問いではない。ヒロもそれがわかっているのか、いたずらっぽい笑みを浮かべ、沙英によりかかった。
「たまには、私が甘えてもいいでしょ?」
その言葉通りの、甘えるような声色。
確かに、原稿を書き上げた後などに甘えてしまうのは、いつも沙英のほうだった。沙英がヒロを後ろから抱きしめる、というのは同じだけれど、今日はそのアプローチをかけたのがヒロだった、という点が大きく違う。
甘い声、甘い感触。いつもと同じなのに、何でこんなに違うのだろう、と沙英は思う。柔らかくて、温かくて。とろけそうだ。
自然と、沙英の腕に込める力が強くなっていたらしい。ヒロが困ったように笑いながら身をよじった。
「ん……ちょっときついわ、沙英」
「え、あ、ごめん」
沙英はそっと腕の力を緩めて、代わりではないけれど、ヒロの頭に顔をうずめた。くすぐったい、とヒロが笑う。


「……私もね」
ヒロの呟きに、沙英は曖昧な返事で応える。
「好きなの、沙英に抱きしめられるの……安心する」
ヒロは目を閉じて、体の前で組まれている沙英の腕に添えていた手をそっとずらして、その掌を握った。
手、というのはどこか特別で、最初から体中で触れ合っているはずなのに、その触れた掌から、指先から、今までよりももっと、ヒロの気持ちが沙英の心に流れてくるように感じる。
「……ちょっと違うよ、ヒロ」
沙英は触れられた掌を少し開いて、そこにヒロの指を誘う。差し込まれたヒロの指を、沙英がぎゅっと握る。
「私は、ヒロを抱きしめるのが好きなんじゃなくて、ヒロが好きなの」
抱きしめるのも好きだけど、とはあえて言わない。一瞬あっけにとられたヒロは、しかしすぐに顔を伏せた。沙英の体にかかっていた心地よい重さや、密着していた柔らかさが、ほんの少し遠ざかる。
沙英はそれを不思議そうな表情で覗き込もうとする。
「……沙英って、やっぱり小説家さんよね」
しかし、ヒロが小さく呟いた言葉に、沙英は動きを止めた。
え? と聞き返すと、ヒロは何も言わずにつないだ指に力を込める。ヒロの気持ちを図りかねて、沙英は再び、その顔を覗き込もうと首を動かしてみる。
少しだけ見えたヒロの横顔は、沙英に負けないくらい赤く染まっていて。
「……私も訂正。沙英が好きだから……抱きしめられると、うれしいの」
そんな顔で、そんな声で、ヒロがそんなことを言うから。
かわいいとか愛しいとか、そんな言葉では足りないくらいの気持ちが、沙英の中に広がっていく。どうしようもなく。
ヒロの肩口にあごを乗せるように、今度は沙英がよりかかるようにヒロを抱きしめた。
視界の端に、ヒロの紅潮した頬が見える。ずるいなぁ、うん、ずるい。
「ありがと……沙英。もう十分甘えさせてもらったから」
恥ずかしさからそう言って離れようとするヒロを、しかし沙英は離そうとはしなかった。
「駄目」
もうちょっと、このまま。
ヒロはもう、とため息のように漏らして、でもその声はやっぱり甘くて。


ちょっと、という永遠に近い時間が、部屋の中を満たしていた。忘れ去られた秒針の音も、それに押されるように、さらに小さくなった。ような気がした。

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無題
初めまして!
前からかなりファンになっている
ユッキーといいます!
ヤバイです…
萌え死にしそうですよ~(/∀゛)
これぞ私が求めていた世界!!笑
もっと沙英ヒロが読みた~ぃ♪
ユッキー 2008/10/16(Thu) 編集
無題
ユッキーさん初めまして。コメントありがとうございます。

萌え死に……萌え死っていいなぁ、そんな死に方ができたら幸せかもしれない。
萌え死ぬか否かのギリギリのラインを攻められたらなぁと思います。
ところでユッキーさんが万一萌え死んでしまった場合犯人は私ということになるんだろうか、とか妙なことを考えてしまいましたごめんなさい。

沙英ヒロ熱は冷める気配がなかなかないので、これからも色々書いていきたいです。
では改めてありがとうございました。
風遊 2008/10/16(Thu) 編集
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