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らき☆すた。


こなたとかがみ。とある男子生徒A視点。


+ + + + + + + + + +

柊かがみというクラスメイトがいる。
うちのクラス委員で、成績は優秀。よく気が付く性格の上に、多少キツ目な印象もあるが(だがそれがいい)容姿もかわいい。
俺を含め、ちょっと良いなと思っている男は多い。
「柊って彼氏とかいねーのかな」
「いないらしいぜ」
「マジで? 実はちょっと狙ってんだよね俺」
こんな風に。
放課後、友人たちと集まってこんな下世話な会話を交わしていると、よく名前が挙がるのが柊なのだ。
しかし実際に行動に移す勇者はなかなかいない。前述の通りの少しキツ目な印象と、それに伴うなんとなく固そうというイメージもその理由なのだが。
「でも柊って『カノジョ』がいるんじゃないの?」
最も大きな理由が、コレ。


別に、本気で柊がそういう趣味だと思っている人間は恐らくいない。しかし彼女には特別仲の良い友達がいるのは確かで、それを見ていると「彼氏を作る柊」の図がなかなか想像できないのも確かだ。
というより、その友達と一緒にいる柊を見る機会があまりにも多すぎて、最近は二人でワンセットのように思えてしまっている。特に俺のような、個人的に柊とそれほど付き合いの深くない人間は。
そんな仲の良い様子から、しばしばその友達は「柊の『カノジョ』」と呼ばれているのだが、もちろん柊も、その友達自身もそのことは知らない。


そんなわけだから、とある日の放課後、部活を終えた後に教室に忘れ物をしたことに気付き、それを取りに戻ったとき、柊とその友達が二人で話していることにも、それほど違和感を感じなかった。
夕陽が差し込み、赤々とした光りに照らされた机や黒板が、普段見ているそれとは違った色合いを見せて、どことなく幻想的な雰囲気の中に、柊と長い青い髪の……確か隣のクラスの泉こなたと言ったか、彼女はいた。柊は自分の席に座り、泉はその柊のすぐ前、彼女の机に腰掛けていた。
それはいつもの光景で、抱き合っていただとか頬に手をかけていただとか、そんな怪しい雰囲気では全く無かったのだが、女子が二人しか残っていない教室に男一人が突入するのもなんとなく気が引けるものがあって、扉に伸びかけた手が一瞬躊躇した。
「……って、好きな人とかいないの?」
その時、教室の中から声が漏れ聞こえてきた。放課後の女子の会話の定番の、恋愛に関する話のようだった。まあ俺は放課後の女子がどんな会話をしているかなんて知らないので、ただのイメージでしかないのだが。
しかしとりあえず、そんな会話をしているとなるとますます入りにくいものを感じてしまい、ここは出直すかと踵を返そうとした。


……いや待て、これはもしかして、柊の好きな人を知るチャンスなのではなかろうか。


踵を返そうとしたのだが……俺の中の悪い部分が、そうささやきだしてしまった。いや、俺は確かに柊のことをちょっと良いかなと思ってはいるが、盗み聞きなんて真似は流石に人間としてどうかと思う。それに知ったところで俺にどうしろと……。
そんなことを思いながらも、俺の本能には忠実な体は、教室の扉の隣の中からは見えない、しかし足元の、恐らく換気用と思われる小さな窓からは二人の声がばっちり聞こえるというベストポジションにもたれかかっていた。誰かが来ても「人を待ってるんだ」と言い訳できるようにさりげないポージングで。聞く気満々な自分の本能にうんざりする。
「い、いないわよそんなの!」
「えー、ホント? 高校生にもなったらそういう人の一人や二人くらいいるでしょフツー」
「だからいないっつーの! そういうこなたはどうなのよ。その理屈ならあんたにも当てはまるでしょ」
教室の中から聞こえてくる会話からは、なんというか、甘酸っぱさのようなものを感じる。俺きもい。
しかし、感情を顕にする柊の声はなかなか新鮮だった。クラスにいるときはクールな印象があり、さっきのような恥ずかしがる声はなかなか聞けるものではない。それだけでも、こうやって人道から外れた行為をしている甲斐があるというものだ。
「私? そりゃいるよ」
「え……」
俺が感慨に浸っている間にも会話は進んでいく。
泉があっさりと柊の言葉を認めたことに、聞いていた俺も驚いた。正直泉とは全く話したことはないのだが、風の噂で聞こえてくる彼女は、「運動神経が無駄に良いその筋の男も真っ青のオタク趣味の少女」というよくわからないもので、失礼ながら男とは無縁だと思っていた。いや、見た目は小さくて可愛らしいんだが。
「そ、そう。いるんだ……全然わかんなかったわ」
柊の声が多少震えているのは俺の気のせいだろうか。どちらにしろ、ショックを受けているのは確かなようだった。それが「先を越された」という感情から来るのか、それ以外の何かかは、俺は柊ではないのでわからない。
まあでも、そんな空気を感じさせない友達に好きな人がいたという事実が衝撃なのは俺にもわかるような気がするので、それほど深い意味はないのだろう。多分。
「かがみ、気になる?」
泉がからかうような声を出した。中を覗くわけには行かないので、二人がどういう表情で会話を交わしているかはわからない。恐らく今の柊の表情はこれまた新鮮なんだろうなと思うと、非常に勿体無さを感じる。
「そ、そんなこと……あんたは二次元にしか興味ないと思ってたから驚いただけよ」
「む、失礼な。その人は特別なんだよ」
「……そう、特別、なんだ……一応聞くけど、どんな人なの?」
「んー……カッコいいっていうかキレイっていうか。パッと見はクールな感じかな。でもちょっとからかうと凄くかわいいんだよ。私がわがまま言っても最後にはちゃんと答えてくれるし、なんだかんだで優しくて。まあ最初は文句言ったりするんだけどね」
「……」
「あ、そうそう。その文句っていうか言い返す様子がまた良いんだよ、かわいくて。あと……」
「もう、いいわよ。ふーん……そんな人がいるんだ」
柊が、泉の話を遮るように声を挟んだ。なんとなくさっきより気落ちしている気がする。泉の話はほとんど惚気だったので、うんざりしたのだろうか。俺もちょっとうんざりしている。
「……その人、ネットで知り合ったりしたの?」
「ううん、この学校の人」
俺は頭の中で、知りうる限りのこの学校の生徒の検索をかけてみる。カッコいい、キレイ、かわいい、クール、優しい……そんな人間いただろうか、とデータベースを漁っていると、思いがけないところでヒットした。
しかしそれはすぐに却下する。それは無い。うん、無い。
「そんな人、いたっけ? こなたの知ってる人でしょ」
「もちろん。毎日会ってるし、ほとんど毎日一緒に帰ってもいるよ」
……いや、マジで?
俺は泉のことはよく知らないが、さっきヒットして却下した人間が毎日誰と帰っているかは知っている。しかしそれは……。
「毎日って、こなたはほとんどつかさとか私と……」
柊の声がそこで止まった。どうやら、俺と同じ結論に達したようだった。


その時、かたんと机の鳴る音が教室から聞こえてきた。泉が、腰掛けていた机から降りた音だろうと想像した。
「……やっと、気付いた? 鈍いねぇかがみんは」
「か、からかわないでよね! 全く……って、ちょ、こなた?」
「からかってないよ。ほら……こんなにどきどきしてるもん」
二人の声が聞こえなくなった。
流石に、これ以上ここにいるのは危険だと俺の中の何かが告げている。というか告白シーン(多分)を見てしまった時点で既に手遅れな気がする。しかも、女子から女子への告白シーンだ。貴重……じゃない。早く離れなければ。
「……本気?」
「うん」
しかし俺のそんな思いとは裏腹に、二人の時間は再び動き出した。そして俺の思いとは裏腹に、それをもっと聞こうとする本能が足を動かしてくれない。
動き出したと思った教室内の時間は、再び沈黙に包まれて、その動きを止めている。それに絡めとられるように、俺の足も全く動こうとはしなかった。
「……」
「……ごめん、かがみを困らせるつもりなんて無かったんだよ。でも……かがみに好きな人がいないって聞いたら、私が好きな人いるって言ったときのかがみの顔見たら……伝えたいって、もう我慢できないって」
泉の声のトーンは、さっきまでとはまるで違ったものだった。もっと切羽詰ったような、苦しいような、そんな声だった。
ああ、本気なんだな。
そう思うと、何故か俺まで胸が締め付けられる気がした。
「……私たち、女同士よ? おかしいじゃない、そんなの」
「ごめん」
「謝るなら、言わないでよ」
「ごめん」
「困ってるのよ、すごく。突然、そんなこと言われたら」
「ごめん……ごめんね、かがみ」
泉の声は震えていた。


俺は思わず、自分が盗み聞きをしている立場だということも忘れて、教室に殴りこみたくなった。
泉のことは確かに知らない。だが、彼女がどれだけ本気かはわかる。自分でもおかしいと、悪いと思いながら、それでも伝えたいと思った気持ちも伝わる。
だが、それに応えるべき柊はどうだ。おかしいだの、困るだの、そんなの分かりきった上でそれでも気持ちを伝えた泉に、追い討ちをかけるような言葉を吐き捨てて。
我ながら独善的な思考だが、しかし耐え切れず、教室の扉に手をかけようとしたその時、がたんという少し大きな音が聞こえて、それを押し留めた。椅子が倒れた音のようだった。
体勢を変えたことで、扉についたガラス越しに、教室の中の風景が見える。
椅子から立ち上がった柊が、泉を抱きしめていた。
「おかしいじゃない……だから私、ずっと言わないでおこうって、そう決めたのに」
「え……?」
「困るのよ……そんなこと言われたら、私ももう……隠せないじゃない」
「かがみ……それって」
「……私も、好きなのよ。こなたが」
ガラス越しに見えた柊の表情は、泣いているように見えた。
その涙が果たしてどんな意味だったのか、俺にはわからなかった。二人にしかわからない、様々な思いがそこにあるのだということだけ理解した。それで十分だと思った。
俺は伸ばしかけた腕を下ろし、鞄を静かに持ち直すと、そっとその場を後にした。
そういえば、と教室に来た本来の目的を思い出したが、今はどうでも良かった。
「ちょっと良いかな」程度で失恋と言えるのかはわからないが、一つの思いが終わったのは確かだというのに、足取りは妙に軽かった。あれだけ強固な絆というか、思いあっている姿を見せられ、それが通じた瞬間を見せられたとなったら、祝福しないわけにはいかなかった。


あれ以来、柊の様子にそれほど変わったところは見られない。相変わらず成績は優秀で、男どもからの人気も高い。
ただ変わったところも確かにあって、泉といるときに、以前とは少し違う幸せそうな笑顔を見せるようになったことと。
「柊、最近またかわいくなったよな」
という男が多少いることくらいだろうか。
俺はそのたびに、口には出さないけれど、心の中で「ああ、『彼女』が出来たからな」と呟く。
そして同時にあの二人に、あの時の盗み聞きと覗き見を謝るのだ。もちろん、これも口には出せないけれど。

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