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らき☆すた。

かがみとこなた。続き物。続くはず。
シリアス……?

+ + + + + + + + + +

学級委員なんてものをやっていると、たまに下校時刻が他の生徒に比べて中途半端に遅くなることがある。
いつもなら、グラウンドで部活動に勤しむ生徒たちの声が、昇降口へと向かう、人気の無い廊下を歩くかがみの耳にも届くのだが、その日はその声は聞こえない。
替わりに、窓を叩く雨の音がかすかに聞こえた。昼ごろから降り出したそれは、強まるでもなく弱まるでもなく、ただ淡々と世界を包んでいく。というより、侵食していく。
雨の日の廊下は、雨音がそれ以外の音を吸収しているかのように、逆にいつもよりも静寂が耳に障った。そんな静寂の中では、自分の足音ですら、一歩一歩が拳銃でも撃ち鳴らしたかのように感じられて、かがみは知らず知らず降ろす踵にブレーキをかけた。
雨は嫌いだ。髪の毛はまとまらなくなるし、靴は濡れるし、そういった諸々のせいで気分まで落ち込んでいく。何より、この雰囲気が嫌いだ。こんな日に一人で歩いていると、世界から隔離されたような孤独感を、そんなわけもないのに感じられる。音と一緒に、気配とか、温度とか、息遣いとか、そういった人を感じられる全てが吸収されているようだ。孤独の侵食。
らしくないな、と一人ため息と苦笑をもらして、かがみは少し歩を速めた。出来るだけ早く家に帰りたかった。


そして彼女はそこに立っていた。
トレードマークになっているはねた髪の毛を、いつもより心なしか萎らせながら、じっと、前庭を雨が叩く外を見つめていた。小さい体と、その体を覆うほどの長さの青い髪の毛と、かすかに見える白い腕と、足と。そのどれもが、いつもと違って儚げに見えて、かがみは思わず足を止めた。出所が分からない不安に似た感情が、唐突に胸に走った。
「こなた」
名前を呼ぶ。はっと肩を揺らして、彼女は振り向いた。その反応に覚えた違和感は、気にも留められないほど小さなもので、かがみはこなたが確かにそこにいた事実にほっと胸をなでおろした。
「遅いよかがみん」
そう言うこなたは、いつもどおりの彼女だった。先ほどまで感じていた様々な感情は、雨のせいで感傷的になっていた自分の気のせいだとかがみは納得した。気を取り直して、不満そうに口元を結ぶ彼女に向かった。
「なんでまだいるのよ。つかさと帰ったんじゃなかったの?」
「いやー、傘を忘れちゃってね。まさかつかさの傘を奪うわけにもいかないし、やむまで待ってたんだ」
そう答えるこなたは飄々としていた。筋が通っているような、通っていないようなその返答に、かがみはどう答えようか一瞬迷う。
「まったく、天気予報くらい見てきなさいよ」
そして出てきたのはいつもどおりの言葉で。
「いやいやかがみん、私は情報に流されない人間なのだよ」
返ってきたのもこなたらしい言葉で。
「それで困ってたんなら世話無いわね」
いつもの言葉のやりとりに、何故か安心した。


「それで、どうするのよ。夜まで降るみたいよ、この雨」
厚い雲で覆われた空は一向に途切れる気配を見せず、それを二人で見上げる。こなたの言葉は返ってこなかった。かがみがちらりと横を向くと、こなたはじっとそれを見つめながら、何かを考えているようだった。
「こなた?」
声をかける。人のことは言えないけれど、今日のこなたはどこかおかしかった。今日の、というより、先ほど会ってからのこなたは。
「え? あ、うん。どうしようか」
上の空でした、といわんばかりのその反応に、体調でも悪いんだろうかと心配になる。しかし、顔色や先ほどの様子を見る限りでは、その可能性は低そうだった。
「おじさんは?」
「あーダメダメ。今日は仕事の打ち合わせだから夜まで帰らないってさ」
眉をハの字にして、こなたはあっさりと言う。つまりは、八方塞というものだろうか。
かがみは少し考えてから、おもむろに鞄の中から折り畳み傘を取り出した。
「仕方ないわね。送ってくわ」
そう告げたときのこなたの表情は、瞳を輝かせて喜ぶでもなく、申し訳無さそうに眉を下げるでもなく、ただ驚いただけに見えた。


色の少ない雨の中を、パステルカラーの傘が一本だけ動く。普通の生徒の帰宅時間からずれているためか、それともこの周辺の土地柄なのか、こなたの家の最寄り駅を降りてから、他に人の姿は見られなかった。
「なんかごめんね、かがみ」
傘を持つかがみの隣、頭一つほど低い位置に、青い髪の毛が揺れていた。こなたの小さな体は、狭い傘の中で身を縮めているためか、いつもより余計に小さく見える。
「別に、気にしなくていいわよ」
アンタに風邪をひかれるよりマシだわ、という言葉は、なんだか恥ずかしかったので飲み込んだ。口にしていたら、こなたにどうからかわれるか……と思ったところで、先ほどからやけに大人しい、むしろしおらしい、隣のこなたの様子が気にかかった。
いつものこなたなら、「相合傘って完全にフラグ立ってるよね!」のような言葉を言いながらはしゃぎそうなものだが、今はただ、黙って俯いたままだ。
こんなこなたは、出会ってから初めてかもしれない。かがみは戸惑っていた。いつもならどれだけ話しても尽きないほど、湧いて出てくるようなこなたとの会話の数々が、今は重苦しい沈黙に押しつぶされて、喉の奥に留まったままだった。
やむ気配の無い雨が、傘を叩く音だけが二人を包んでいた。雨は、音や、気配や、温度のほかにも、言葉まで奪い去っていくのだろうか。かがみは考える。
一歩、また一歩と歩を進めていくたびに、こなたの家が近づいてくる。このまま、こなたと分かれてはいけないとかがみは思った。言葉にはし難いが、今のこなたは、同じ傘の中という狭い空間にいるにも関わらず、どこか遠いところにいるように感じられてならなかった。
「こなた」
「かがみ」
意を決して口を開いたかがみの声に、こなたの声が重なった。そして同時に、かがみは自分のタイミングの悪さに辟易する。
「あ、ごめん。何?」
「ん、そんな大したことじゃないから、こなたからでいいわ」
また、沈黙が訪れる。先ほどより、打開しがたい沈黙に感じられて、かがみは自分に対して舌打ちでもしたかった。
しかし、かがみがそれをどうにかするより早く、こなたがスッと息をつくのがわかった。
「かがみは……」
雨の音にかき消されそうな、小さな声がかがみに届く。黙って、その続きを待つ。
「……ごめん、なんでもない」
「……そう」
そして、沈黙。
こういうとき、私はどんな風に言葉を返して、こなたはどんな風に答えていただろうか。つい先ほど、昇降口で同じことをしたはずなのにそれがかがみには全く分からない。
今思えば、あの時にかがみが「いつもどおりだ」と思ったこなたのほうが気のせいだったのではないだろうかと思えて、かがみはまた、形容しがたい不安のようなものに襲われた。
「雨、やまないわね」
その思いを吐き出すようにもらした声は、もしかしたら少しかすれていたかもしれない。いつのまにか、声の出し方も忘れてしまったのだろうか。
「そうだね……って、かがみ! 肩が濡れてる!」
その言葉に答えるときに、ちらりとかがみのほうを向いたこなたが、それに気付いて声を上げた。
指摘されて、かがみは初めて自分の左肩が濡れていることに気が付いた。同時に、久しぶりにこなたのこなたらしい声を聞いた気がして、胸の奥にあった錘が少しだけ軽くなるのが感じられた。
「大丈夫よ、そんな濡れてるって程でもないし」
「ダメだよ! これでかがみが風邪ひいちゃったら……」
何故か必死なこなたに、かがみは少しの戸惑いと、少しの申し訳なさと、嬉しさを感じた。自分を心配してくれているこなたの気持ちが嬉しかった。
だから次の行動を取ったのは、今までの不安や重苦しさからの反動だった。
「……じゃあ、これでいいでしょ」
右手に持っていた傘を、少しの間だけ左手に持ち替えて、かがみはこなたの腕を引いた。元々近かった二人の体が一瞬触れ合う。夏服から伸びた素肌の感触は、冷たいとも熱いとも言えなかった。
こなたは驚いてかがみを見上げる。その視線から、かがみは逃げるように顔を背けた。
再び傘を右手に持ち替えたかがみの、その制服の袖を、おずおずとこなたが掴んだ。その感覚に、かがみの中で何かが動く。雨なのに、熱を奪われているはずなのに、妙に暑いな、と思った。
「……離れないでよ、また濡れちゃうから」
赤くなった頬は、こなたには見られないだろうか。そう思ってちらりと横を向くと、既に俯いてしまったこなたの表情はかがみには見えなかった。
ただ、ほんの少し赤くなった耳と、雨音が隠しきれなかった小さな呟きだけを、微かにかがみは認識した。
だめだよ、かがみ。
こなたは確かにそう言っていた。


身を寄せ合って歩く二人の間には、やはり会話らしい会話は無い。ただそれは、先ほどまでとは違う種類のものだった。お互いの体温を感じられるだけで、不安や緊張は小さくなった。
しかしその二人だけの空間は無限ではない。数分も歩くと、もうこなたの家は目に見える位置まで迫っていた。
「もうすぐつくわね」
「うん。ありがと、かがみん」
こなたはそう言って笑う。久しく見ていなかった気がするそれに、かがみの胸がまた高鳴った。
「べ、別に……風邪でもひかれて、また『ノート見せてー』とか言われたら面倒だしね」
「むふふー、やっぱりかがみんはそうでなくっちゃ」
そんな会話を交わしている間に、こなたの家の目の前に着いた。二人は同時に足を止める。
かがみは胸をなでおろしていた。最後に、またいつものやりとりが出来たことで、明日からもまた同じようにこなたと接することができると、そう思った。
しかしこなたは、なかなか家に入ろうとしない。
「どうしたの? もう着いたわよ」
かがみが尋ねる。こなたはまた少し俯いて、何かを言いあぐねているようだった。
「……せっかくだから、寄ってかない?」
その言葉がかけられることは、普段ならなんら問題はない、自然な流れのはずだった。ただ、こなたの雰囲気と、雨に中てられた自分自身によって、かがみの心にわずかな波風を立てた。
「残念だけど遠慮しとくわ」「もう遅いし」「家族が心配するし」
断る言葉は頭の中にいくつも浮かんだ。
しかしかがみはそのどれをも選ばず、ただ首を縦に振った。それ以外の選択肢を選ぶことは、出来なかった。

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