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らき☆すた。

かがみ→こなた。
少し未来の話。SPITZの「仲良し」より。

+ + + + + + + + + +

カーテンを開けると、雨はまだ降っていた。昨日の夜から降り続けているというのに、空はまだ泣き足りないようだった。
窓から見える街の景色はそれほど面白みがあるものでもなく、すぐ下にある道路にも人の姿は無かった。雨粒が、自ら作り出した水溜りに落ちて、小さな波紋を作り出している。それだけだった。窓ガラスの向こうからは、その音も聞こえてこない。
視線を退屈な窓の外から外す。棚に置いた時計の針は正午を指そうかという時間だった。今日は休日で、昨晩は遅くまで講義に使う資料をまとめていたとは言え、さすがに寝すぎたかと肩をすくめる。
重く垂れ込める雲と、それに飲み込まれそうな街を再び一瞥し、音を立ててカーテンを閉めた。


大学への進学を機に生まれ育った街を離れてから、これが三回目の夏だった。
大学の生活にも、自分で料理を作ることにも、宿題について尋ねてくる妹や騒がしい姉がいないことにも、今はすっかり慣れていた。高校時代にいつも一緒にいた友人がいないことにも、いつのまにか慣れていた。
薄情なんだろうか、と今も時折考える。慣れるということに、昔の生活を失ってもこうして生きていけているということに、罪悪感に似た感情がいつも心のどこかで燻っている。
しかしそれは仕方の無いことだ。むしろ、あの生活が楽しかったからこそ、しかしもうその生活には戻れないと知っているからこそ、こうして時が流れるにつれて慣れていくことが必要なのだろうと、最近はそう考えている。言い訳染みていると、そのたびに苦笑を漏らしたくなるけれど。
そんなことを考えながら、ベッドに身を投げ出した。よく雨の日は古傷がうずくというけれど、雨の日は古い感情や記憶も思い起こさせるに違いない。カーテンの向こうで降り続く雨を思いながら目を瞑ると、聞こえないはずの雨音が聞こえてくる気がした。
そういえばあいつはあまり雨の日が好きじゃなかったな。昔は好きだったらしいけれど、その理由をつかさに聞いたときは、あまりにも「らしい」理由に笑ったっけ。
閉じた瞼の裏に、青く長い髪の毛の、高校時代の友人の顔が浮かぶ。
今彼女は何をしているんだろうか。真面目に大学には通っているのだろうか。大学で友人は出来たのだろうか、進路は決まったのだろうか。堰を切ったように、彼女への様々な感情があふれ出して、心のどこかがざわつくのをはっきりと感じた。
高校を卒業し、お互いに違う道を歩き始めてからは、それぞれの生活を慮ってか、連絡を取り合う機会もめっきり減ってしまった。最後に声を聞いたのは何ヶ月前だろうかということも、正確には思い出せない。
しかし高校時代のことを思うと、未だに真っ先に浮かぶのは彼女の顔で、彼女の声で、彼女の言葉で。そのたびに、言葉に出来ない感情が胸に走る。耐え難いほどに。


前言撤回。まだ、彼女のいない生活に、私は慣れることが出来ていない。
先ほどの理屈を逆に言えば、私は彼女との楽しかった高校生活にはもう戻れないということを、未だ自分の中で消化できていない、ということだろうか。なんて不毛な感情だろう。不可能だということはわかっているのに、それをまだ望んでいるなんて。
自分がリアリストだという自覚はあった。だからこそ、そういった現実的な理屈ではどうすることも出来ないこの感情を、どうすればいいのかわからない。それどころか時が流れるにつれて、彼女との距離が離れるにつれて、記憶の中にいる彼女の存在はだんだんと大きくなっているようにすら感じた。
私の記憶の中の、言うなれば夢の世界にいる彼女へのこの思いは、いったいなんなのだろうか。それがわからない。私には……。


気付くと私は、昼休みの教室にいた。
聞こえてくる世間話や笑い声はどこか懐かしくて、それが昼休みの教室の喧騒だということにわかるのに少し時間が掛かった。
ゆっくりとあたりを見回す。見覚えのある教室、見覚えのある机、目の前に広げられた弁当箱。そして。
「ん? どしたのかがみん、きょろきょろして」
記憶の中そのままの、彼女の、こなたの姿があった。
「あ、もしかして寝てた? めずらしー、かがみんが居眠りなんて」
「お姉ちゃん、昨日も遅くまで勉強してたからねー」
「あんまり無理をなさらないほうがいいですよ? かがみさん」
両隣には、つかさとみゆきもいる。あの頃の、楽しかった昼休みの時間が目の前にあった。
私は何をしていたのだろう。確か、ベッドに寝転んで、こなたのことを……そうか。これは間違いなく夢だ。しかも飛び切り性質の悪い、悪夢だ。
「……かがみ? ホントにどうしたの?」
押し黙ったままの私の顔を、こなたが覗き込む。特徴的にはねた青い髪の毛、大きな瞳、目元のほくろ、白い肌、猫のような口元、そのどれもが、昔見たままのこなただった。
「体調悪い? 熱は無さそうだけど……保健室行く?」
こなたの心配そうな表情に胸が痛くなる。からかわれた記憶ももちろん多いけれど、なんだかんだで良く気が付く、心根の優しい子だった。確かに趣味は偏っていたけれど、明るくて、誰よりも友達を大事にして、いつも笑顔で……だから私は。
……私は?
「なんでもない。ちょっと考え事してただけだから」
「そう? ならいいんだけど……かがみが学校休んだりしたら私が困るから、気をつけてよ」
「なんであんたが困るのよ。どうせ、宿題見せてもらえないからとか、そんな理由でしょ」
「む……まあそれも無いわけじゃないんだけど……やっぱりかがみがいないと学校来る楽しみも減るっていうか」
「んなっ!?」
「ほら、やっぱりかがみんは私の嫁なわけだし?」
「誰が嫁だ!」
懐かしい声に、懐かしいやりとり。こんなに楽しいものだったっけ、その感覚すら忘れていた。
「ふふ……お姉ちゃんとこなちゃんって、ホント仲良いよねー」
「ええ。ちょっとうらやましいです」
つかさとみゆきが言葉を挟む。その言葉に、少しだけ胸が痛んだ。
そう、こんなやり取りを、確かに私は数年前まで毎日繰り返していた。抱えきれないほど楽しくて、時々寂しさを感じて。
……あれ?


「っ!」
飛び起きた。
さっきまでの喧騒も、つかさもみゆきも、もちろんこなたも、私以外の人間はこの空間に誰もいなかった。薄暗い部屋の中、冷蔵庫が低い音を立てているのがかすかに耳に届いた。棚の時計の短針の数字は、二つほど進んでいた。
やっぱり、悪夢だ。
宴の終わりの物寂しさとも言えない。夢と、この孤独な空間とのギャップは、言葉に出来ないほどの絶望を感じさせる。しかし、それだけではない。
「バカね」
呟いた独り言は、果たして声になっていただろうか。
私は馬鹿だ。あんな夢を見てしまったこと。そして、今更気付いてしまったこと。あの頃の私が感じた寂しさの理由と、今の私が感じている痛みの理由に。
「仲良いよね」と言われたときの、あの感情が答えだったと、なんでもっと早く気付かなかったのだろう。私とこなたが、それ以上近づけない距離にいることを再認識させるその言葉に痛みを感じていたという事実を、なんで私はもっと早く。
再びベッドに仰向けに寝転がる。もう一度、バカね、と呟いた。流れた涙には、気付かない振りをした。


そのまま、何分経っただろうか。気付くと、カーテンの外が少しだけ明るくなっていた。
雨が上がったのだろうか。
起き上がり、そっとカーテンを捲ってみる。案の定いつのまにか雨が上がっていた世界は、雲の切れ間から差し込む光に照らされていた。
雨に濡れた木や、家や、自動車なんかが、その光を受けてキラキラと光っていた。様々なものが雨によって洗い流されたその世界は、生まれ変わったかのように輝いていた。
雨の後の世界がこんなに美しいということを、私は今初めて知った。
もしも、私の心に降っている雨が上がったならば、同じように私も輝けるのだろうか。そんなことを考える。
そうだとしたら、そのための光を与えてくれるのは。
私は、机の上の充電器に差しっぱなしになっていた携帯電話を手に取った。電話帳から彼女の名前を選ぶという行動も久しぶりで、しかしそれを何度も繰り返しているかのように、私の指はごく自然にその名前を探し出す。
「泉こなた」の名前と、電話番号と、メールアドレスが画面に映し出された。それを見つめながら、少しだけ躊躇する。メールで伝えるという方法も思い浮かんだけれど、意を決して通話ボタンを押した。
話すべき内容なんて決まりきっている。問題は、彼女が電話に出るかどうかだった。
呼び出し音が鳴る。一回、二回、三回、四か……。
『もしもしっ!』
三回半のコールで、やけにあわてた様子の、しかし夢の中と、記憶の中と同じ彼女の声が、耳元から聞こえてきた。
「もしもし。もしかして、忙しかった?」
『違うよ! かがみからの電話だから急いで取ったんだよ!』
こなたの声は弾んでいた。もしかして、待っていてくれたのだろうか。そう思うと、声が聞けたこと以上の嬉しさが、胸の中に広がった。
「そう。なら良かった」
『……良くないよ。かがみ全然連絡してくれないんだもん。それで、突然どしたの?』
「理由がなきゃ、電話しちゃダメ?」
『……まさかかがみんからそんなデレを聞けるなんて』
「冗談よ。その……こなたに、伝えたいことがあって」
『むう、冗談か。残念……それで、伝えたいことって?』
「うん……あのね、私……」
これを伝えたら、こなたはどんな反応をするだろう。困るだろうか、悲しむだろうか、怒るだろうか、それとも……。


そう、あれは恋だった。

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