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らき☆すた。

かがみとこなた。「想う イン ザ レイン」の続き。


+ + + + + + + + + +

「タオル持ってくるからちょっと待ってて」
こなたはそう言って、かがみの言葉を待たずに家の奥へと引っ込んでいった。そんなに濡れてないからいいのにと思いながら、しかしかがみも律儀にこなたの言葉に従って玄関で待つ。
少し時間が経ってから、真新しいタオルを持ったこなたが戻ってきた。それを受け取り、かがみは肩の辺りと足元を拭く。幸いローファーの中までは濡れてなかったので、タオルを必要以上に汚す必要は無さそうだった。
「じゃあ私は飲み物か何か用意するから、先に部屋行っててよ」
こなたはタオルを受け取ると、そう言ってまた奥のほうへ行ってしまった。そんな殊勝なヤツじゃなかろうに、とかがみは訝しむけれど、今は黙っておくことにした。


言葉の通り先に部屋にあがらせてもらう。主のいないこなたの部屋は、しかしこなたらしい雰囲気で包まれていた。それは置いてある漫画やフィギュアやゲーム、壁に貼られたポスター等から感じるものとは他に、かすかに感じるこなたの匂いのようなもののせいだろうと、かがみは思う。
絨毯の敷かれた床に座り込んで、ベッドの上にあったクッションを抱えながら、かがみはこなたを待った。なかなかやってこないこなたは、果たして何を考えているのだろうかと考える。
今日のこなたが、かがみの精神状態を抜きにしてもどこかおかしいのは明白だった。その原因に思いを巡らせてみるが、一向にそれがわからない。きっかけすらもわからない。
昼休み、いつもと同じように昼食をともにした時は普通だった。放課後、つかさとともに「一緒に帰ろう」と教室を訪ねてきたときに、委員会があるから先に帰っててと謝罪の言葉とともに告げた時も普通だった。
何かあるとすればその後、つかさと先に帰ったはずのこなたが、何故か一人でかがみを待って昇降口に佇んでいた、その間。
つかさと喧嘩でもしたのだろうか。単純に考えれば、最も確率が高いのはそれだった。


かがみは携帯電話を取り出す。こなたがやってくる気配はまだ無かった。かがみはメール作成画面を開いて、つかさのメールアドレスを呼び出した。
『こなたと何かあった?』
そう打ち込んで、少し躊躇する。そうだとするならこなたから直接聞いたほうがはるかに話は早いし、何も無かった場合、この状況に対する説明がますますつかなくなる。つかさに対してもいらない心配や誤解などを与えることになる。それが嫌だった。
しばらく考えて、あと五秒数えてこなたがやってこなかったら送信しようと決めた。かがみは心の中でカウントを開始する。
一、二、三、四、五。
ドアは開かなかった。
送信ボタンを押して、メールが送られていく様をじっと見つめた。完了画面に切り替わったそれに、かがみ一つ息を吐いた。
そして返信を待つ。慣れてきたとは言えつかさはまだメールを打つのが遅い上に、そもそも気付かない可能性もあったので、しばらく時間がかかることを覚悟した。


それから二分ほどして、音を立てたのはかがみの携帯電話ではなく、こなたの部屋のドアのほうだった。
「ゴメンね、遅くなっちゃった」
こなたの手には、お盆に載せられたオレンジジュースが二つ載っていた。
「随分遅かったわね、何やってたのよ」
「いやー、ちょっとねー」
こなたははぐらかすような笑顔と共にそう言って、それをテーブルの上に置いた。そして、ベッドの近くに座るかがみと、距離を取るような位置に座り込んだ。
そんな些細な距離にさえ、かがみは何か「普段とは違うもの」を感じる。しかし流石に考えすぎだろうと思い直し、オレンジジュースを手に取った。はっきりした甘味と酸味が、もやもやしていた思考を少しだけクリアにしてくれた。
こなたも同じように、オレンジジュースに口をつけている。しかしそれは、言葉を発しない理由をそこに与えているように思えてならなかった。
痺れを切らしたかがみが、オレンジジュースを再び机の上に置いて言葉を切り出そうとした瞬間、ポケットにしまいなおしていた携帯電話が震えた。
タイミングが良いのか悪いのかわからないそれに、かがみは気持ちが削がれるのを感じながら、一先ずそれを確認する。こなたがじっとその動作を見ていることには、気付かないフリをした。
『なんにもないよー?
こなちゃんがかさが無くて困ってたから、送ろうかーって聞いたけど、こなちゃんのお父さんがむかえに来てくれるから先帰っていいよって言ってたくらいかな。
私それで帰っちゃったからちょっと心配してたんだけど、もしかしてこなちゃんまだ帰れてなかったの? だいじょうぶ?』
少し長めのメールを読みながら、かがみの頭の中はまた様々な考えで満たされていった。
とりあえず考えるのは後に回し、つかさにはなんでもないから気にしないでとだけ返信しておく。余計なことは言わないほうが良いと思った。
「どしたの? もしかして家の人心配してる?」
こなたが、そんなかがみを見ながら口を開いた。
それにどう答えようか、かがみは逡巡する。
「つかさよ。帰るのが遅いから心配してるみたい。大丈夫って言っておいたわ」
そしてあっさりと出てきた自分の嘘に、かがみは自分自身で苦笑をもらしそうになった。嘘は苦手だと思っていたが、そうでもないようだ。


それより、問題はこなただった。つかさは「なんにもない」と言っていたが、「つかさ」という名前が出た瞬間、かがみの目にはこなたが明らかに動揺したように見えた。そして先ほどのメールでは、「お父さんが迎えに来てくれる」とつかさには言っていたらしいが、しかしかがみには「お父さんは出かけている」と言っていた。
どちらが本当かなんて、考えなくてもわかる。特に後者は、こなた以外に人の姿が見られない今のこの家の状況を見れば明らかだった。
「……ねえ、こなた」
「ん、なに?」
努めて冷静に、こなたは答える……ようにかがみには見えた。今のこなたは、様々なことを隠している。それがどういう意味を持っているのか、かがみには図りかねた。
「アンタ、さっきからなんか変よ? 何かあった?」
だから、直接聞いてみるしかないと思った。かがみの言葉に、こなたはあからさまに肩を震わせる。その行動はより一層かがみを確信付け、こなたにとっても失態だったのか、観念したように俯いた。
その様子に、かがみは何か尋問でもしているかのような居心地の悪さを感じる。
「言いたくないなら別に……」
良いんだけど、という言葉は、こなたがぶんぶんと首を振ったことで遮られた。それが果たして、どっちの意味なのかを掴みきれず、かがみはこなたの言葉を待つ。
「……かがみは、さ」
ゆっくりと、こなたは口を開いた。
「かがみは……例えば、私とつかさ……つかさじゃなくてもいいや、私とみゆきさん、私とかがみのクラスの友達……どちらかを選べって言われたら、選べる?」
こなたは呟くように、しかしはっきりとした口調で、かがみに尋ねた。かがみは唐突なその質問に戸惑いを感じ、言葉に詰まる。
こなたはそんなかがみの様子を気に留めないかのように、かがみの返答を待たずに言葉を続けた。
「私ね、選べちゃったんだ」
こなたはそこで、自嘲的な笑みを浮かべた。かがみは思考が追いつかず、何度もこなたの言葉を反芻する。選んじゃった、と選べちゃった、にはどんな違いがあるのだろうと、半ば逃避的に考える。
その時、かがみは自らが何かに押し倒されるのを感じた。何か、なんて、この空間には一つしかなかった。思考が中断され、現実に引き戻される。こなたの頭から伸びた長い髪が、ベールのようにかがみの顔の横を覆っていた。その隙間から、細く白いこなたの腕が見えた。
薄暗い中でも、こなたの表情が何かに耐えるように歪んでいるのがかがみにはわかった。押し倒されているはずなのに頭の中は妙に冷静で、いつのまにこなたは近づいたのだろうとか、やっぱりこなたは軽いのだなとか、どうでもいいことを考えた。
「私は……つかさは大事な友達だと思ってる」
かみ締めるように、こなたは言った。頭の上から聞こえるそれを、どこか非現実のような感覚で、かがみは聞いた。
「でも、私はつかさに嘘を吐いちゃった。しかも、凄く自分勝手な理由で」
先ほどのメールでつかさが言っていたことだろうか。かがみはその内容を思い出しながら、こなたの言葉と、嘘の意味を考えた。
こなたはつかさに、「お父さんが迎えに来る」と嘘を吐いた。それはつかさを帰らせるための嘘で、実際は見ての通り、おじさんは家にいない。結局こなたは私が委員会を終えるまで待ち、私と一緒に帰った。そしてさっき、こなたは「選べちゃった」と言った。
そこまで考えて、ようやくかがみは理解した。
「最低だね、私って。友達を天秤にかけるようなことしてさ」
こなたはそう言って笑ったけれど、それは今にも泣き出しそうな笑顔だった。胸が痛くなるようなそれから目をそらそうとしても、かがみは体制的にも精神的にも、そうすることはできなかった。
些細なことのように思える。しかし友人がお世辞にも多いとはいえないこなたにとっては、その誰もが大事な存在で、そのどちらかを、しかも自分自身から選ぶような真似をしたことが信じられなかったのだろう。
不器用だな、とかがみは思う。そしてほんの少しだけ、こんな状況で不謹慎だとは思いながらも、こなたが自分を選んでくれたことに嬉しさを感じているのも事実だった。
「そんなに、気にする必要ないわよ」
かがみは優しく、こなたに手を伸ばした。こぼれそうな涙を溜める目じりをぬぐいながら、静かにその頬を撫でた。
しかしこなたは、かがみの手を拒否するように小さく首を振った。行き場を失った手を、かがみは下ろすことも出来ずに宙をさまよわせた。
「違うんだよかがみ。私、気付いちゃったんだよ」
こなたの声は震え始めていた。後悔なのか、恐怖なのか、悲しみなのか、それを知るためにもかがみはただ言葉を待つ。
「かがみを待ってる間、つかさに悪いことしたなとか、私は酷いヤツだなとか、色々考えた。理由も考えた。理由を考えてるうちに、かがみの優しいところとか、かわいいところとか、そんなことばっかり考えてる私がいて……そしたら、もしかしたら、私は……」
こなたは、そこで一度言葉を飲み込んだ。これから口にすることに対する躊躇が、かがみにもありありと伝わってきた。
かがみは、昇降口に佇むこなたに感じた儚さや不安や、声をかけた瞬間の、小さく肩を震わせた姿に感じたわずかな違和感を思い出す。あの瞬間、こなたは何を思ったのだろう。何に気付いたというのだろう。しかしいくら考えても、かがみはそれに思い至ることは出来なかった。ただ、こなたの言葉の続きを待つしかなかった。
やがて、心を決めたように、こなたの表情が変わった。ゆっくりと息を吐いて、静かに口を開いた。
「私は、もしかしたらかがみが好きなんじゃないかって、そう思った」


耳がおかしくなったのかとかがみは思った。実際、周囲からは音らしい音が聞こえなかった。雨はまだ降っているのだろうかと、場違いな考えが浮かんで、しかしすぐに消えていった。
こなたの言葉は、頭のどこかに詰まってしまったかのように、ただ音だけがぐるぐると回っていた。その意味を理解してはいけないと、かがみの中のかがみではない誰かが言っているようだった。
「気のせいだと思ったんだよ。だっておかしいじゃん、私とかがみは友達で、女同士で、なのに好きだなんて。でも……でも、意識しちゃったら駄目だった。かがみが来て、送るって言ってくれて、凄くうれしくって、でも上手く言葉が出てこなくって、歩いてる最中も何か凄く緊張しちゃって。私がそんなだから、困ってるだろうなとか、気持ちを気付かれないかなとか……嫌われちゃうかなとか、そう思ったら、もっと言葉が出てこなくて」
こなたは、捲くし立てるような口調で、今まで口に出せなかったことを全て吐き出すように言った。目からは、口に出し切れない思いを代弁するような、大きな涙が溢れ出して、ぼたぼたとかがみの頬を濡らした。
「好きかもしれないって思いは、絶対に伝えちゃいけないって思った。伝えたら、前みたいにはなれないって、そう思った。でも、かがみが私を引き寄せてくれたとき、すっごく嬉しかったけど、心臓がうるさくて、顔も熱くて……おかしいよね、ちょっと前まで、平気でくっついたりしてたのにさ……もうダメだって、伝えないと私が壊れちゃう、伝えなくても、私がそんなだったら、前みたいな関係には戻れないって」
こなたの涙は止まらなかった。かがみの頭の中の、かがみではない誰かは、既にこなたの言葉の波に流されて、全ての言葉は、かがみの脳に直接届くように響いた。


だめだよ、というこなたの呟きを思い出す。あの言葉の意味がわかった気がして、せき止められていた感情がその小さな穴をきっかけにして、堤防が決壊するかのようにあふれ出し、妙にすっきりとした思考を与えてくれた。
「……私ね、不安だった」
かがみは、言葉を選ぶように、ゆっくりと口を開いた。
「こなたと歩いてるとき、いつもと違うこなたが、なんか凄く遠くにいる気がして。でも、それは間違ってなかったのね」
かがみの言葉に、こなたの表情には絶望感が広がった。
当然だ。遠い存在、ということは、こなたの思いは受け入れることが出来ない、という意味なのだから。
「……ごめんね、かがみ。変なこと言ってさ」
こなたは床についていた腕で、ごしごしと目元を擦った。ずっと同じ体勢だったために、その手は血液の流れが悪く、普段より白く見えた。
勢いをつけて起き上がる。かがみの目に、久しぶりに電灯の明かりが直接注ぎ込んだ。そのまぶしさに一瞬目がくらむ。
「は、はやく帰らないと、つかさとかが心配するでしょ、もう帰ったほうが、いーよ」
こなたはかがみに背を向けて、震える声で言った。時折上下する背中は、いつもよりはるかに小さかった。
「……馬鹿ね」
かがみはゆっくりと起き上がった。そしてこなたの後ろに静かに立つと、その小さな肩に腕を回し、ぎゅっと、優しく力を込めた。こなたは唐突に感じた温かさに動くことが出来ず、ただ目を見開いた。
「最後まで聞きなさいよ、あんたの悪い癖ね」
かがみはそう言ってクスクスと笑った。こなたは、少しだけまわされた腕の力が強まったのを感じた。
「こなたのいいところは、思ったことをはっきり言うところなんだから……何か溜め込むなんて、あんたらしく無いわよ」
「……」
「我慢して、我慢して……そんなこなた、私は知らないもの。遠く感じるのは当然よ」
「……でも」
「そうね、確かに驚いた。でも……こなたの話を聞きながら、私も色々考えた。そしたら、私も同じだったわ」
また、かがみの腕に力がこもった。こなたは少し痛いくらいだったが、逆にそれが、この夢のような状況に、現実感を与えてくれた。
「私の中にはいつもこなたがいて、それが今の私を作ってるんだって。もう、こなたが隣にいない私を想像することも難しいのよ。こなたが隣にいないと、隣にいるこなたがこなたらしくないと、それだけで不安で仕方が無くなっちゃう。それに……嬉しいって思っちゃったからね。こなたが好きって言ってくれたとき」
かがみの、優しくささやくような言葉に、ようやく、こなたは肩に入っていた力が抜けた気がした。
そして胸の前で組まれているかがみの手に、そっと、自らの手を重ねてみた。かがみはその小さな掌の感触に、どくんと胸が高鳴るのを感じた。
「ありがと……かがみ。好きだよ」
こなたは、もう口に出せないと思っていた素直な思いを、そっと口に出した。


こなたの中ではそこでかがみも「好きだよ」と返し、甘い空気になると、そう思っていた。
……のだが一向にその言葉は聞こえてこない。不安に思い、振り向こうとしたその瞬間。
かがみは腕の力を緩め、半ば無理やりに近い形で、こなたを自らと向き合わせた。その突然の行動に、こなたは状況を認識できず、ただなすがままにかがみの瞳を見つめる形になった。
「……さっき、一緒に帰ってる途中でも思ったけど」
上気したままの頬には、先ほどの名残の涙の後が走り、瞳はかすかに潤んでいる。そんなこなたの表情に、かがみの胸がまた音を立てた。
「いちいちかわいすぎるのよ、あんたは」
涙の後をなぞるように指を滑らせ、かがみはその頬に掌を添えた。
「え、あ、ちょ! 流石にそれはまだ早いってかがみ!」
何をしようとしているのか、そこで理解したこなたは、あたふたとその腕の中でもがいてみる。
「時間なんて関係ないわよ、大事なのは気持ちなんだから」
「ほ、ほら、そろそろ帰らないとつかさが心配するだろうし!」
「こなたのほうが大事……あ、やっぱり私もこなたを選ぶみたいね」
「それはちょっと違うような気がするっていうか私たちまだ高校生だしー!」
「年齢も関係なし……あ、忘れてたわ」
何を言っても聞き入れそうになかったかがみが、抱きしめていた腕の力を緩めた。こなたがほっとするのもつかの間、じっとその瞳を見つめ、優しく微笑んだ。
こなたの体温がまた上がる。
「まだ、私のほうから言ってなかったわね……好きよ、こなた」


この状況で、その笑顔とその言葉は卑怯極まりない。
こなたは観念したように、そっと目を閉じた。
その表情を満足げに見つめながら、かがみはそっと、その唇に自らのそれを落とした。


窓の外は既に雨もやんで、いつの間にか星空が広がっていた。
携帯電話の震える音がかすかに聞こえてきた。つかさなら、今日のことを含めて、こなたと二人で謝ろう。
しかしそれは後回しにして、今はただ、この幸せな感触をゆっくりとかがみは味わいたかった。

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